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November 08, 2010
私はウィリアムテル(‥ )ン?
今から30年前の歯科診療。
術者が立位診療から座位診療へと移行する時期ではなかったかと思います。
と言ってもあまりピンとこないと思いますが、昔の歯医者さんは立って診療をしていました。
立って診療をするということは、歯を削る機械のエンジンを回す為に、片足でペダルを踏みます。
必然的にもう一方の足で全体重を負担します。
さらに前かがみになり首を斜めに曲げての診療。
精密な仕事をする時にする姿勢ではないですよね。
そこで考えられたのが座位での診療。
足への負担は軽減したものの、腰と首を曲げて覗き込むという診療姿勢は変わっていませんでした。
その当時、Dr.ビーチという方がミラーテクニックによる、ホームポジション診療というのを提唱されました。
術者は座って背筋を伸ばし、胸を張り、一切腰や首を曲げて口の中を覗きこまない。
腕は脇を閉めて、90度に保つ。
その姿勢で直視できない部位は、デンタルミラーで鏡越しに歯を見ながら削るという今まででは考えられない診療姿勢。
広島大学歯学部保存学教室の当時の教授は学生にそのポジションでの診療を実習させました。
まともに削ることさえ出来ない学生に、ミラー越しに歯を削らせる( もちろん模型で )とい実習は不満だらけでした。
『ウィリアムテルみたいに、鏡を見ながらなんてできるわけない!!』
当時の私もその考えで、実習担当の先生の目を盗んでは覗き込みながら歯を削っていました。
でも不思議なもので慣れればこれほど楽で、しかも精密な作業が出来る診療姿勢はありませんでした。
しかしこの診療姿勢はスタッフの協力無しにはできない診療。
すなわちこの診療姿勢は、歯科医師一人での診療から、チームでの診療へと移行するきっかけになったといっても過言ではないと思います。
当時の先生たちの熱心な教育のおかげで、今のスムースな診療、そしてチーム作りの基礎ができたと感謝しています。
写真右の小さなミラーがビーチミラー。
口の中で歯を見ながら削るのに、左のような大きなミラーは邪魔になってしまいます。
投稿者 yoshimoto : November 8, 2010 07:00 AM