歯周病は治るのか?

歯周病は治る病気ですか?

と聞かれると私はこう答えています。

 

残念ながら治りません。

でも、コントロールしていけば歯を抜かずに済む可能性は十分あります。

 

いきなり衝撃的な表現で申し訳なく思いますが、ではなぜ私がそう表現したのかを何回かに分けて説明していきたいと思います。

まず一番大切なこと、それは歯周病という病気を理解することです。

 

初診の患者様との会話・・・

『今までに歯周病って診断されたことありますか?』

『いいえ、一度も言われたことはありません』

『では、歯石を取ったりする歯のお掃除を受けたことはありますか?』

「はい、定期的にクリーニングに通っていました」

 

という会話を初診の患者様とよくします。

この会話に矛盾点を感じられた方は、

歯周病に関して理解が出来ている方なのでこの続きは読まなくても大丈夫だと思います。

矛盾点も感じられなかった方は、

この続きを読んでいただきたいと思います。

 

歯石を取ったりするスケーリングという治療行為は、必ず歯周病検査を行い歯周病と診断されてから行うことができる歯周病治療の一つです。

なので歯のクリーニングを定期的に受けていましたという患者様はすべて歯周病と診断されています。

 

さて、それでは歯周病はどこがやられる病気でしょうか?

と質問すると、99%の方が

歯ぐき

と答えます。

歯周病=歯ぐきの病気ならば、

歯肉病

になるはずです。

なぜ漠然とした

歯周

という言葉を使うのか、このことを理解していただくのが重要なポイントです。

では、歯周って何にを指しているのでしょうか?

歯の周りにある組織

それは大きく分けて3つあります。

一つは歯ぐき

 

二つ目は歯を支えている歯槽骨

 

そして三つ目は、歯と歯槽骨をつなげている歯根膜という靭帯

 

歯肉・歯槽骨・歯根膜

を歯周と表現しています。

従ってこの三つの組織がやられてしまう病気が歯周病です。

それではこの三つの組織の役割は何でしょうか?

次回に続く

 

さてそれでは、

歯肉(ハグキ)・歯槽骨・歯根膜

それぞれの役割は???

 

歯を支えているのはハグキと答える方が多くおられます。

ハグキのような肉で歯を支えて固い物を咬むなんて絶対無理ですよね。

でも不思議とそう思っておられている方が大半です。

ハグキは歯槽骨をカバーしている単なる1㎜くらいの薄い肉です。

重要な役割は歯槽骨を守るバリアなんです。

このバリアが壊されると、大切な歯槽骨が最近に曝されてしまい溶けてしまいます。

厳密に言うと

付着歯肉

が壊されてしまうことが最大の問題です。

 

付着歯肉って何???

ですよね。

付着歯肉ってどこにあるの???

ですよね。

 

 

歯肉溝(歯周ポケット)内で歯とハグキが接着しているところを言います。

唯一この部分だけで歯とハグキはつながっています。

この付着歯肉が壊されてしまうと大切な歯槽骨が溶かされてしまうのです。

歯周ポケットを磨きなさい

って言われるのは、この付着歯肉が壊されないようにする為なんです。

 

歯槽骨

これが一番大切なところです。

歯を支えているのは歯槽骨

骨なんです。

しつこいですが、ハグキではないんですよ。

歯周病になるとこの歯槽骨が溶けてしまいます。

 

骨が溶ける????

 

って皆さん中々納得してくれません。

ここを理解していただくといかに歯周病をコントロールすることの大切さを分かってもらえます。

 

 

 

歯根膜

歯と骨とを繋いでいる靭帯です。

こんなところに靭帯が???

って思うのも事実です。

普通に考えてみると分かりますが、骨と骨とを繋げているのが靭帯です。

歯という骨と歯槽骨を繋げているのが歯根膜という靭帯です。

この靭帯が歯周病菌により壊されてしまいます。

足首の靭帯がひねって伸ばされたら痛くて歩けないですよね。

それと一緒です。

歯根膜という靭帯が壊されると、咬むと痛いので咬めれなくなってしまいます。

 

ここまで読んでいただいた方はなぜ歯周病が進むと歯を抜かなければならないかが理解できたと思います。

でももう一つ大切なのが、歯槽骨と歯根膜が溶かされ壊されているにも関わらず痛みを感じないということです。

歯を支えている歯槽骨が半分以上溶かされて初めて

なんとなく咬みにくくなったなぁ~

って感じ始めます。

それまでは咬めないと感じることがないので厄介で怖い病気です。

歯槽骨が半分以上溶かされてしまう前にいかに歯周病を理解し予防に心がけるかで一生自分の歯で咬めるかどうかが分かれてしまいます。

 

ではどうしたらいいの??

 

しっかりと歯科医師に診断してもらうことが大切です。

そして衛生士にどうコントロールしていけばいいのかじっくりと相談することです。

 

治療のついでに歯石取っておきますねぇ

 

なあ~んていう簡単な予防治療ではないですよ。

じっくりと時間をかけて

検査して

指導して

そして治療して

毎日一日4回歯磨き

 

検査して

指導して

そして治療して

毎日一日4回歯磨き

の繰り返しです。

ついでにできる治療内容ではないのが事実です。

 

ついでに歯石取っておきますねぇ

 

という言葉は存在しません。

歯周病予防に大切なのは歯磨き指導です。

私は毎日磨いているから大丈夫!!

という方がほとんどです。

磨いていると

磨けているとのギャップを認識することが大切です。

 

歯周ポケットを磨く

 

を、ハグキをマッサージすると勘違いしておられる方が多いのも事実です。

ズボンのポケットにティッシュを入れたまま洗濯機に入れても必ずポケット内にティッシュは残りますよね。なのでポケットの中に手を入れてグチャグチャのなったティッシュをかき出します。

誰もが知っている当たり前の事実です。

歯周ポケットの場所を確認し、

歯周ポケットの深さを確認し、

その歯周ポケットのサイズに合った清掃器具を選択し磨く。

この的確な診断・指導がなされるかどうかがとても重要です。

ハグキを磨いても歯周ポケット内には汚れが残っています。

 

ついでに歯石取っておきますね。

頑張って磨いてくださいね。

 

なぁ~んていう簡単な話ではないんですよ。

 

あーーーめんどくさ

 

って感じるのが事実です。

ちゃちゃっとやってくれる歯医者にいくわぁ

って思ってしまうのも事実でしょうね。

 

病気と向き合い予防コントロールしていくのは一生の話です。

 

このブログのタイトル、

歯周病は治るのか?

溶けてしまった歯槽骨が元通りに戻り、

壊された歯根膜が再生できれば、

治ったと言えるでしょう。

でも実際には現在の医療では再生医療はまだまだの分野です。

歯周病は治らない。

だから、進まないようにコントロールしなければなりません。

 

上手くコントロール出来ていますよ。

頑張っていますね。

お口の中を見れば毎日の努力がよくわかります。

でも安心はせずに今まで通り続けてくださいね。

 

この言葉を患者様にかけることが私たちの幸せです。