父の目(2)
平成6年に善本歯科医院の院長が父から私に交代しました。
その翌年にあの大震災が・・・
父の妹と義理の弟が亡くなり、もう一人の妹も頭を骨折して入院。
親戚は腰を骨折して入院。
父の生まれ育った実家であるお寺は全壊。
そしてここ善本歯科医院も半壊の被害を受けました。
父はずっと泣いていました。
私が見た初めての父の涙でした。
小さな体にポッコリお腹のスーパーマンと思っていた父の姿はそこにはありませんでした。
そんな姿は私の知っている尊敬している父ではないと、
私は父の目を見ることも、父の姿を見ることも避けてしまいました。
医院の再建は私に任せ、父は実家であるお寺の再建に尽力し、そして衛生士協議会の為東京へ行き来するようになり本来の父の姿に戻ってきました。
眼光鋭い父の目は苦手ですが、父の怖い目をまた直視できなくなってしまったことが、何となく嬉しかったですね。
82歳で父は歯科医師を引退しましたがその後も東京への会議へは出席していたかな?
この頃の父は優しい目をしていましたが、何となく恥ずかしくて目を見て話しをすことができませんでしたね。